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04

Oct. 2022

10月号 「真菌のヒミツ ―キノコ・酵母・カビ―」

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キノコ、酵母、カビというと、みなさんはどのようなものを思い浮かべますか。
キノコはシメジやシイタケ、酵母はパン酵母やビール酵母、カビは麹菌やお風呂場に生えたカビ、などでしょうか。
これら3つの微生物は見かけがかなり違いますが、同じ真菌の仲間です。それによる分類上の区別はありません。そして、カビがキノコになったり、カビが酵母みたいになったり、酵母に見えていたものがカビになったりと姿を変えることがあるのです。

カビと酵母ときのこ

 

えっ?キノコがカビ?と驚かれている方に証拠写真をお見せしましょう。

このとおり!シャーレの中の白いカビの菌糸からキノコの赤ちゃんが生まれているのがわかります。

スエヒロタケ

 

すべてのキノコは、カビと同じように菌糸と胞子を作ります。そのサイクルで自然界を生きているのです。

 

じゃあ、酵母はどうですか?パン酵母を放っておいたら、カビになるのでしょうか。ああ、それはなりません。酵母の姿とカビの姿を行ったり来たりできる仲間は限られているのです。

でも結構、身近にいるのですよ。ケカビの仲間です。冷蔵庫の中で忘れていた野菜に生えてしまうことがよくあります。

このケカビは、空気(酸素)がたくさんあるところでは、しっかり菌糸を伸ばしてカビらしく?生きていますが、脱気した缶入り食品や発酵食品など、酸素がほとんどないところでは、酵母状に姿を変えて、生き延びることができます。そして、酸素がある状態になれば、また元の姿にもどります。たくましいですね。

酸素がない状態のケカビの姿

 

 

最後にもうひとつ真菌のヒミツをご紹介しましょう。
 

真菌の仲間は、細菌と異なり、有性生殖をします。つまり、♂♀といいますか、+−といいますか、性があります。植物のように、雌雄同体のものもあれば、雌雄異体のものもあります。【写真1】のスエヒロタケは雌雄異体なので、左右に別株を植えています。つまり、株同士が有性生殖し、キノコ誕生に至っているというわけです。パン酵母だって、お風呂場のカビだって実は有性生殖できるのです。

ただし、普段、我々の目に見えるところでは、胞子をつくったり出芽したりして、ひたすら無性生殖で増殖しています。

といいますのも、我々の生活環境のような栄養分豊富なところでは、少しでも早く発育して仲間をたくさん増やすことが何よりも優先されるのです。

効率よく仲間を増やす無性生殖と、環境変化にも適応できるように多様性をもつ子孫を残す有性生殖と、両方のサイクルを駆使して、カビの仲間は長い年月を生き継いでいるのです。

無性生殖と有性生殖の使い分け



執筆者プロフィール

北海道大学獣医学部ご卒業後、旧大阪府立公衆衛生研究所において、女性で初めてとなる副所長兼感染症部長を務められた。現在は、日本防菌防黴学会理事、日本食品微生物学会理事など多方面でご活躍。

 
 


【専門家コラム】

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