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Jan. 2022
1月号「カビってどんな生きもの?」
我々の生活環境の中でいろんなところに生えてくるやっかいなカビって、いったいどういう生きものなのでしょうか。カビをやっつけるには、カビを知ることが大切です。
今月号では、まず、身近なカビの正体をご紹介しましょう。
<胞子は目でみえない、生えるとみえる>
カビは胞子の状態で空気中を漂っています。その大きさは0.002 mm~0.01 mmぐらい。とても目に見える大きさではありません。それが運よく、自分に都合のよい場所に落ちると、芽をだし、菌糸をどんどん伸ばします。あれっ、カビが生えちゃった!と気づいたときには実はカビはずいぶん大きくなっているのです。胞子が落ちてどのくらいで目に見える大きさになるのかというと、それは、カビがどんなところに落ちたかによります。最高の条件のところに落ちて、2日ぐらいでしょうか。厳しい条件のところだと、何か月もかかることがあります。もっと厳しい条件だと・・?カビは生えることができず、やがて死んでしまいます。どういうところに落ちるかはすべて風まかせ、運まかせです。ですから、カビは仲間をふやすため、たくさんの胞子をつくって、あちこちに胞子を飛ばしているのです。
<カビの種類は多い>
カビにはたくさんの種類があります。それぞれのカビには特徴があり、適所適材で個性を発揮して生きています。主にカビの色を見て、昔のひとは、クロカビ、アオカビ、ハイイロカビ、ススカビ、アズキイロカビなどと名前をつけました。カビの色は胞子の塊の色からきていることが多いのです。
<もともとのすみかは土の中>
土の中にはたくさんのカビが住んでいます。その数はなんと1 g中に数十万個以上。いったい何をしているでしょう。実はカビは、動物や植物や虫などのさまざまな生物の死がいを分解して土に返すという、とっても大切な仕事をしているのです。
<カビの発育4条件>
カビには生えるために必要な条件が4つあります。この条件がうまくそろうとカビはあっという間に生えてしまいます。
その4条件とは以下のとおりです。
- 温度:カビがもっともよく生える温度は20℃から30℃です。20℃以下の低い温度ではカビはゆっくり生えます。30℃以上では生えることができるカビの種類が限られてきます。
- 湿度:ご存じのとおり、カビは湿度が高いほうが生えやすくなります。ですから、お風呂場や台所の水回りにカビが生えやすいのです。そして、湿度が60%以下になるとカビは生えることができません。カビも生きものなので、生きるためにはやっぱり水が必要なのですね。
- 酸素:カビが生えるには酸素が必要です。でも、私たちと違って、ほんの少しの酸素(0.1%程度)でもがんばって生えることができます。もちろん、酸素がいっぱいある方が、よく生えます。
- 栄養分:カビが生えるにはエサとなる栄養分が必要です。住まいの中では、ホコリ、食べ物カス、毛、皮脂などがカビのエサになってしまいます。カビはいろんなものを分解する能力が高いのです。
今月号では生きものとしてのカビについて簡単にご紹介しました。次回はその対策についてお話しましょう。
北海道大学獣医学部ご卒業後、旧大阪府立公衆衛生研究所において、女性で初めてとなる副所長兼感染症部長を務められた。現在は、日本防菌防黴学会理事、日本食品微生物学会理事など多方面でご活躍。
【専門家コラム】
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