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Jan. 2023
保護者向け
衣類害虫の生態と対策
衣類害虫と呼ばれる昆虫たちをご存じですか?
「知ってるよ、衣類の虫食いの犯人でしょ?」「見たことある」という方もいれば、「名前を聞いたこともない!」という方もきっといることでしょう。
そこで今回は、知っているようで知らない、衣類害虫の生態に迫ります。
写真の代わりにかわいいイラストでお届けするので、虫が苦手な方もご安心ください!
目次 ■基本情報 ■衣類害虫と繊維 ■侮ると危険!衣類害虫の生態 ■家の中への侵入方法 ■対策 |
■衣類害虫とは
繊維製品を食べ、害を与える昆虫たちをまとめて衣類害虫と呼んでいます。
日本でよくみられるのは、カツオブシムシ類に属する「ヒメマルカツオブシムシ」と「ヒメカツオブシムシ」、そしてイガ類に属する「イガ」と「コイガ」の4種類です。
実は、衣類害虫が繊維を食べるのは幼虫の時だけ。成虫になると、カツオブシムシ類は花の蜜を好むようになり、イガ類は何も食べなくなります。幼虫と成虫で嗜好がガラリと変わるのは、なんだか不思議な感じがしますね。
■基本情報
・カツオブシムシ類
カツオブシムシ類は甲虫の一種で、かつお節や煮干しを好んで食べることからこの名前が付きました。かつお節以外には、羊毛製品、絹、蚕、昆虫標本などの乾燥した動物質の物や、麦類やトウモロコシなど植物質の物を食べます。
カツオブシムシ類は、表面が毛羽立ってふっくらした所を選んで産卵し、ガラスのようにスベスベした所にはあまり産卵しないという性質があります。これは、柔らかい卵を保護するための行動だと考えられています。我が子を想う気持ちが素敵ですね。
また、カツオブシムシ類には面白い特徴もあります。
幼虫期は光を避けて暗闇で生活しますが、成虫になってしばらくたつと、ある日突然光に向かって飛び立って行くのです!冒頭でも触れた食べ物の好み も、光に対する反応も大きく異なっていて、まるで幼虫と成虫で別の生き物みたいですね。
・イガ類
イガ類は蛾の仲間で、漢字では「衣蛾」と書きます。毛織物、絹織物などの動物繊維や、羽毛、皮革を好んで摂食します。
どちらの幼虫も巣を作って生活します。イガの幼虫は筒状の巣を作り、半身を乗り出すようにして巣ごと移動して生活します。一方、コイガの幼虫はトンネルまたは筒型の不規則な形の巣を作りますが、巣ごとの移動はしません。イガの巣は食べた繊維を綴りあわせて作られるため、食べた繊維製品の色がそのまま反映されます。
・好きな場所
衣類害虫は暗くて人目に触れないところが大好き!そのため、家の中だと衣類の収納空間やカーペットのほか、床の隅っこや隙間、机・台の下などに潜伏していることが多いです。
また、屋内にいるイメージの強い衣類害虫ですが、実は屋外にも生息しています。建物の床下や樹木の陰、鳥やハチの巣の中などに住み、昆虫や小動物の死骸を食べて生活しています。人間からは疎まれがちですが、自然界では掃除屋としてとても大切な役割を担っているのです。
■衣類害虫と繊維
・そもそもどうして繊維を食べるの?
衣類害虫はどうして繊維を食べるのでしょうか。理由はいたってシンプルで、繊維の中に栄養分が含まれているからです。
ただ、この栄養分はすべての繊維に含まれているわけではありません。「高級な素材の衣類ほど虫食いの被害に遭いやすい」というような話を聞いたことがありませんか?それは都市伝説などではなく、高級品とされる繊維に限って衣類害虫が好む栄養分が含まれているから、というちゃんとした理由があるのです。
・好きな繊維は?
衣類害虫が好むのは、羊毛や羽毛、生糸などの動物繊維やシノンです。
シノンは、絹(シルク)に似た構造をもつ半合成繊維です。
動物繊維を使用することが多いセーターなどの冬物は特に注意してください!
今、「じゃあ、これ以外の繊維は虫食いに気を付けなくていいんだ!」なんて思いましたか?
残念ながら、そのほかの繊維であっても油断はできません。なぜなら、汚れや染みも衣類害虫にとっては大事な栄養分となるからです。したがって、汚れや染みがついていると、その他の繊維であっても虫食いの被害に遭ってしまうことがあります。
・繊維の食べ方
カツオブシムシ類とイガ類では繊維の食べ方が異なります。カツオブシムシ類は表面をまんべんなく食べるため、表面全体に散らばって食害の跡が見られ、最終的に穴があきます。
一方、イガ類は繊維を一本ずつ引っ張り出して食べます。そのため、糸のねじりが弱い衣類の方が繊維を引っ張りやすく、イガ類に食べられやすくなります。
■侮ると危険!衣類害虫の生態
・ライフサイクル
ライフサイクルは、カツオブシムシ類とイガ類で大きく異なりますが、それぞれに食害の被害が大きくなる要素が含まれています!
カツオブシムシ類の注目ポイントは幼虫期間の長さ!1年に1世代ですが、そのうちの約300日間を幼虫で過ごします。幼虫の期間が長いということは、それだけ繊維を食べる量も多くなるということ。気が付いた頃には甚大な被害が…!なんてことにもなりかねません。
イガ類の注目ポイントはその世代交代の速さ。カツオブシムシ類と比べると幼虫期間が短いため、危険度は低いように感じますが、イガは年 に2~3世代、コイガは年に3~4世代を繰り返すため、食害量は必然的に多くなります。生育の条件次第では、なんとイガは年に6世代、コイガは年に8世代繰り返すこともあるとか💦想像しただけで恐ろしいですね。
・生息環境
温度や湿度といった環境要因によって、衣類害虫の食事量は大きく変化します。
・温度
衣類害虫は、25~30℃の時が最も活発になります。35℃以上になると食事量が減少し、また、10℃以下になると食事量がほぼ0になります。
ここで、屋内と屋外の年間平均気温を見てみましょう。
屋内では、年間を通して平均気温が15℃以上であることが分かります。つまり、屋外と比べると温度変化の少ない私たちの家は、冬であっても衣類害虫にとって快適な環境ということ!
・湿度
衣類害虫は、50~70%時が最も活発で、11%以下、もしくは92%以上になると食事量が減少します。
屋内と屋外の年間平均湿度を見てみましょう。
なんと!屋内では、年間を通して平均湿度が50~70%の範囲にぴったりと収まっています。つまり、私たちが暮らす家は衣類害虫にとって一年中暮らしやすい湿度であるということです。
■家の中への侵入方法
衣類害虫たちは、いったいどのようにして家の中に入ってくるのでしょうか?
・ヒメマルカツオブシムシ
衣類害虫の中でも特に気を付けたいのが、ヒメマルカツオブシムシの成虫。淡い色の花や物に飛来する習性があるため、ヒメマルカツオブシムシをくっつけたまま、うっかり家の中に持ち込んでしまう場合があります。
具体的には、
・花屋で購入した鉢植えや庭で摘んだ花を家の中に持ち込むとき
・淡い色の服を着て外出し、公園で時間を過ごしてから帰宅したとき
・淡い色の洗濯物を取り込むとき
は、ヒメマルカツオブシムシの成虫がくっついていることがあるため注意が必要です。
・衣類害虫全般
ヒメマルカツオブシムシ以外の衣類害虫たちも、もちろん家の中に侵入してきます。
衣類害虫の生息場所である鳥の巣が家の近くにある場合は要注意!虫やその卵が洗濯物に付着し、取り込む際に一緒に家の中に持ち込んでしまう場合があります。
このように、衣類害虫はふとした瞬間に家の中に入ってきます。もしかしたら、衣類害虫にとっても予想外の侵入かもしれません。そう考えると少しかわいそうな気もしますね。
そして、侵入後に食害するのは衣類だけではありません。カーペットも繊維で出来ているので、衣類害虫の住処兼エサになってしまう場合があります。イガはカーペットの毛を根元から食べるため、被害を受けた箇所は毛が倒れた状態になり、分かりやすいです。
■対策
・家の中に入れない
衣類害虫による被害を防ぐためには、まず衣類害虫を家の中に入れないことが大切。帰宅時や洗濯物を取り込む際には服をよく払い、虫が付いていないか確認するようにしましょう。
・衣類は汚れを取り除いてから収納する
衣類害虫は汚れやしみのついた衣類を好んで食べるため、収納をする前に汚れを取り除くようにしましょう。少々面倒くさくても、着用後の服は洗濯やクリーニング、染みがついている部分は染み抜きをしてから収納してください。
・定期的に換気を行う
室内の湿度を下げるためには、定期的な換気がおすすめ。天気の良い日には窓を開けて換気、雨の日には窓を閉めてエアコンや扇風機で空気を動かすようにしましょう。うっかり忘れてしまいがちですが、換気の際には衣類の収納空間も開け、一緒に除湿するようにしてください。
・衣類用防虫剤を使用する
衣類害虫は体が小さく、密閉したつもりの衣装ケースにさえ容易に入り込めてしまいます。
そこでおすすめなのが、衣類用防虫剤を使用すること。使用する際には以下のことに気を付けましょう。
①用途に合ったものを選ぶ
市販の防虫剤は、それぞれの用途に合わせた蒸散性や剤形で作られています。そのため、クローゼット用、タンス用、衣装ケース用など、用途に合ったものを選ぶようにしましょう。
②使用量を守る
製品パッケージに記載されている使用量を守り、使い過ぎにならないように注意しましょう。
③定期的に交換をする
使用期限を過ぎた防虫剤は効果が弱くなってしまうため、交換しましょう。
④同一の防虫剤を使用する
異なる種類の防虫剤を混用すると、染みや変質の原因となる場合があるため、同一種類の防虫剤を使用するようにしましょう。
■大切な洋服を守ろう!
衣類害虫の幼虫にとっての食べ物が日常的に溢れていて、かつ一年中快適な人間の家は、四季を問わず絶好の生息環境!気が付いていないだけで、もしかしたらあなたの家にも潜んでいるかも?
そこで大切なのは、虫食いが起こらないように予防対策を行うこと。「自分の家は大丈夫だろう」と安心せず、しっかりと予防対策を行って、大切な衣類を守りましょう!
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