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Dec. 2022
保護者向け
幼児期の教育と通信教育について
通信教育を比較するメディア「おうち教材の森」を運営しています、ARINA株式会社の高橋です。
今回は、幼児期の教育と通信教育について書かせていただきました。
まず、幼児期の教育についてです。
私は、幼児期の教育は最も費用対効果の高い教育のひとつだと考えています。
幼児期の教育が効果の高い理由は2つあります。人の構造的な面と、経済的な面です。
構造的な面では、有名なスキャモンの発達曲線 1) があり、脳神経系の成長は5歳で9割完成するという医学的知見に基づいて、幼児期の教育の重要性を示唆されています。実際に育児放棄された3歳児の脳の大きさが、通常家庭よりも小さいという研究結果 2) があり、教育が人の脳に与える影響が明らかになっています。つまり、幼児期の接し方で脳の大きさが変わるかもしれないというものです。
また、これはノーベル経済学者のジェームス・ヘックマンさんのペリーの就学前研究 3) やアベセダリアンプロジェクト 4) においても、幼児期の教育をすることで、大人に至るまでの長い将来、良い影響を受け続けるという結果もあります。他にも、高所得者層と貧困層で、子どもに浴びせる言葉が3000万語以上 5) も差があり、それが発達に影響するという研究もあります。これらは海外の結果ですが、日本でも子どもの環境によって語彙に差が出る研究があります 6) 。
これら様々な研究によって、幼児期の教育は社会で成功するために重要な教育だと考えてます。
ここで1つ補足しておくと、幼児期の教育=早期教育を指していません。
現在、主流な幼児期の教育方針は、ひらがなや計算などを早く覚える早期教育ではなく、五感をフルに活かして脳や身体を刺激する教育です。
早期教育による効果が社会的に目立つことから、幼児教育=早期教育と思われがちですが、現在の幼児期で重要視されているのは、いかに子どもにとって良い刺激を与えるか、といった点です。いわゆる、学習する力につながる基盤となる力(非認知能力)の形成が大切なのです。
次に経済的な面をお話します。
昨今、総中流家庭が崩壊し、貧困層が増加しています。一方で、経済的に豊かな親を持つ子が東大に合格するというデータがあります。つまり、経済格差による教育格差が生まれています。
この背景の中、幼児教育は中学、高校の教育と比べればお金のかからない教育であって、経済格差を打開しやすい時期とも受け取れます。前述する、人の能力に与える影響も鑑みると、幼児期の教育こそ、教育格差を是正する突破口になると信じています。
しかしながら、貧困は経済的な面だけでなく、心の余裕も少なくなることから、幼児期の教育を積極的に行おうという家庭が少ないのも事実です。私自身、貧困家庭で育ち、毎日の生活に精一杯な両親の姿を見てきました。教育費が少ない時期だというだけで、「教育をやりましょう」と言ってもなかなか普及しないのが現状だと思います。
そんな課題を抱え、少しでも当社にできることはないか?と考えた結果、「おうち教材の森」という通信教育を比較するメディアを展開する事業を開始しました。
こどもちゃんじや、ポピー、スマイルゼミをはじめとする通信教育は、長年の知見を経て、いまや成熟した内容になっています。
数々の教育論文を読んだ私も、「もう、こどもちゃれんじや、ポピーに大事なことは全部書いてあるじゃないか」「わざわざ幼児期の教育を勉強しなくても、通信教育でかなりの部分がフォローできるな」と感じています。
例えば、ポピーでは工作を通じて巧緻性を養う点を重視していたり、Z会では体験を通じて様々な刺激を受け、考える力を養う点が重視されています。
しかも、この教育は月々1000円程度からはじめられるので、費用対効果は高いと思います。
前述した幼児期の教育の重要性や、経済的格差を鑑みると、通信教育は手軽にはじめられて効果の高い手段ではないかと感じています。
ぜひ、小さなお子さんがいらっしゃる家庭では通信教育を検討してみてください。
【引用】
1.スキャモンの成長曲線
RICHARD E. SCAMMON, Ph.D. (Med.Sc.); MEREDITH B. HESDORFFER, M.D.(1937). GROWTH IN MASS AND VOLUME OF THE HUMAN LENS IN POSTNATAL LIFE. Arch Ophthalmol, 17(1), 104-112.
2.育児放棄された子どもの脳が育たないという研究結果
Bruce D. Perry(2002). Childhood Experience and the Expression of Genetic Potential: What Childhood Neglect Tells Us About Nature and Nurture. Brain and Mind volume 3, 79–100.
3.幼児教育で非認知能力が高くなる研究結果
James Heckman(2013). Understanding the Mechanisms through Which an Influential Early Childhood Program Boosted Adult Outcomes. AMERICAN ECONOMIC REVIEW VOL. 103, NO. 6, 2052-86
4.アベセダリアンプロジェクト
Flavio Cunha, James J.Heckman, Lance Lochner, Dimitriy V.Masterov(2006). Interpreting the Evidence on Life Cycle Skill Formation. Handbook of the Economics of Education, 697-812.
5.3000万語の格差について
Dana Suskind and Kristin Leffel(2013). THE THIRTY MILLION WORDS PROJECT: A RANDOMIZED CONTROLLED PILOT.
6.育て方・環境で語彙が変わる研究
内田伸子(2017). 「学力格差は幼児期から始まるか?」『教育社会学研究』 100巻, pp.108-119.
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